井上凛子の医学帳

井上凛子の医学勉強をまとめていきます

糖尿病を説明できますか?

こんにちは、凛子です。

病気紹介その2は糖尿病についてです。

皆さんも糖尿病って名前はよく耳にすると思います。でも、それが何かって説明できますか?

 

目次

 1. 人間と糖

1-1 人体でのエネルギーの作られ方

1-2 インスリンの働き

1-3 インスリンっていつ、どこで作られる?

2. 糖尿病とは

2-1 じゃあ糖尿病ってなに?

2-2 1型糖尿病2型糖尿病

3. 糖尿病になるとどうなるのか

4. まとめ

5. おわりに

 

 

 

1. 人間と糖

1-1 人体でのエネルギーの作られ方

 

糖尿病を説明するには、まず人体ではどうやってエネルギーが作られているかを知っておく必要があります。

まず、エネルギーの素になるのはグルコース、つまり糖ですね。そしてこのグルコースからATPアデノシン3リン酸)という成分を取り出し、そのATPが我々の身体を動かしています。

この取り出し作業のことを、糖代謝といいます(もっと詳しく言うと解糖系

ですね)。

代謝は全ての細胞で行われています。人間って全ての細胞がそれぞれ生き物のようなもので、それぞれがエネルギーを作らないと生存ができないのです。

ちなみに、この糖代謝の経路で酸素を使うので、我々は呼吸してます。

 

1-2 インスリンの働き

全ての細胞で行われている糖代謝ですが、実はその素になるグルコースは勝手に細胞の中には入ってくれません。

よくよく考えてみると、勝手に入ったりしたらエネルギー調節が出来ませんよね。人体は上手くそのあたりは調整できるように作られています。

そこで働くのがインスリンです。インスリンは細胞に働くと、

「糖を取り込みなさい!」

という指示を出します。すると、細胞の中にあるGLUT4というタンパク質が細胞の表面までやってきて、血管の中にある糖を細胞内に取り込み始めます。

これがインスリンの働きです。

つまり血糖値を下げる物質、それがインスリンです。実は血糖値を上げる物質はたくさんあるのですが(グルカゴン、コルチゾールなど)、血糖値を下げる物質はインスリンだけなんですよね。

一任されている。嫌な予感がしますね。

 

1-3 インスリンはいつ、どこで作られる?

インスリン膵臓のβ細胞で作られています。

そして、常時ドバドバ出ているわけではなく、血中の糖が増えた時に多く分泌されます。

血中の糖が増える時、食後ですね。

 

 

2. 糖尿病とは

2-1 じゃあ糖尿病ってなに?

さて前置きが長くなりましたが、本題に入ります。

糖尿病とは、

インスリンの作用が低下する病気」です。

作用の低下とは、①インスリンが働きにくくなる、②インスリンの分泌量が少なくなることを言います。

この結果、本来取り込まれるはずの血中の糖が取り込まれず、血管の中に溢れることになります。そして血管のゴミは腎臓から尿に出ていくので、糖尿になるのです。

血糖値が上がり、糖尿になる。それが糖尿病です。

 

2-2 1型糖尿病2型糖尿病

ここで糖尿病には種類があることを把握しておきましょう。

皆さんが一般に想像するような生活習慣病の一つである糖尿病は2型分類されます。

1型糖尿病とは

「自己免疫が膵臓のβ細胞を破壊することでインスリンを作れなくなる病気」です。

不思議なことに自らの生体防御システムが、自分の膵臓に対して攻撃を行ってしまう病気です。ウイルス感染などの自己免疫が強く働いたことをトリガーに発生します。これは防ぎようがなく、若い人に発症し、体型もやせ型の人が多いです。しかも進行性で改善することはない難病です。

ここで最も重要なのは、糖尿病は必ずしも生活習慣病ではないということです。糖尿病治療をしていると聞いて、相手の生活習慣を蔑むような行為は安直過ぎますので、注意しましょう。

2型糖尿病とは

インスリン抵抗性が増大し、インスリンが効きにくくなる病気」

こちらは、様々な原因によってインスリンが細胞に働き掛けづらくなる疾患です。

その原因には、肥満、過食、高脂肪食、運動不足、ストレス、加齢などがあります。そして、その結果増えた血糖も、細胞がインスリンに対して抵抗して反応しにくくなる力(インスリン抵抗性)を増大させてしまいます。(これを糖毒性といいます)

つまり、血糖が増える→糖毒性→インスリン抵抗性増大→血糖が増える→etc...の悪循環に陥ってしまうわけです。

ちなみに遺伝性に2型を起こしてしまう人もいます。

 

3. 糖尿病になるとどうなるのか

①実は初期は無症状なのです。これが一番厄介で、自覚できる症状が全くないから検査で引っかかっても気にしない人が多いのです。このうちに何もしないと糖尿病はどんどん進行していきます。

②少し進行すると、多尿、多飲(たくさん水を飲んでしまう)、口が渇くという症状が現れてきます。糖尿になってしまった自らの尿は、通常に比べて糖が入っているので濃度が高くなります。そしてその濃度を元に戻すために尿量を増やそうとする働きが起こります。これにより、脱水を起こし上記の症状が起こりやすくなります。

これを浸透圧利尿というのですが、かなり難しいので理解しなくても大丈夫です。

③さらに年単位で進むと、様々な合併症に悩まされることになります。

血糖による血管障害からの動脈硬化、神経障害(手足のしびれ)、網膜症、腎臓障害が起こってきます。なんとなく分かるとは思いますけど、手足や目、腎臓がやられたら生命に関わります。

他にはDupuytren拘縮(薬指や小指が固まる)、Charcot関節(神経障害で痛みを感じなくなり、関節がかなり変形したもの)、浮腫性硬化症(うなじから背中にかけてがむくんで硬くなるもの)が起こってきます。

 

4.まとめ

まとめると、糖尿病とは

インスリンの作用が低下し、本来取り込むはずだった血糖があふれ、尿にまで出てきてしまうくらい放置された生活習慣病(1型、遺伝性の2型を除く)」

ということが分かります。

 

5.おわりに

皆さん糖尿病について、なんとなくでも分かっていただけたでしょうか?

次回は糖尿病に対する治療について書きたいと思います。

それではまた。

アルツハイマー型認知症ってなに?

凛子です。

病気紹介その1です。

アルツハイマー病って皆さんよく聞きますよね?

どんな病気なのか、あまりよくわかってない人も多いのでまとめたいと思います。

 

【病態生理】

まず正常な神経細胞っていうのは、細胞体と軸索によって出来ています。

ヨーヨーを想像してみて、丸いのが細胞体、ひもが軸索です。

そして、細胞体にτ(タウ)蛋白という物質があります。これは軸索の細胞骨格の安定化に関わっています。ヨーヨーのひもの強化ですね。

 

では異常はどうでしょうか。

①細胞体に変な蛋白であるΑβ(アルファベータ)蛋白がたくさん現れる。

②このΑβ蛋白が一定数以上たまると、τ蛋白を変性させて異常τ蛋白が産生。

③τ蛋白が変性しちゃうので、細胞骨格が不安定になり軸索破壊が起こる。

 

軸索がやられてしまうと、神経の繋がる場所でのアセチルコリン(伝達物質)の放出量が少なくなります。これにより、色々な障害が出てきてしまいます。

 

でもこれ、腕とかに起こったら記憶とかに関係しないですよね。

実はこの変性、脳の海馬で最初に起こりやすいんです。

海馬とは、短期記憶の要所。最近のことからどんどん忘れていきます。

ちなみに、よく聞く記銘力低下とはこの最近のことを覚えられないことを言います。

 

ついでに、この変性はマイネル基底核にも影響してきます。

マイネル神経核意欲に関する機能を持ち合わせています。

意欲低下って、介護者への抵抗で顕現してくるんですよね。これは殴ったりとかではなく、何もしない方の抵抗です。なんもしてくれなくなります。

 

初期症状:意欲低下+短期記憶障害(記銘力低下)

 

この後は取り繕い(症状を隠す)だったり、物盗られ妄想(自分がなくしたものを他人のせいにする)が起こってきます。

 

【治療】

軸索の破壊は阻止できないので、アセチルコリンを減らさないことに尽力するのがアルツハイマー認知症の治療です。

つまり...

治らない疾患なのです。

アセチルコリンを減らさないために、

ドネペジル→アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを阻害することでアセチルコリンの量を保つ薬

メマンチン→NMDA受容体拮抗薬(難しいので説明を省きます)

などを使っていきます。

 

以上になります。

アルツハイマー認知症がどんな病気なのか、大体わかってくれたかなと思います。

またお会いしましょう。